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元制作会社の人間が教えるパンフレットの作り方

パンフレットの作り方 業界裏話

印刷会社の考えていること

更新日:

 

 

相手(印刷会社)のことを知ると交渉がしやすくなる

ビジネスをする上で相手のことを知っておくというのは大事なことであるというのは言うまでもありません。
コストを抑えるために直接印刷会社に発注する場合は当然ですが直接発注を出さず制作会社経由で発注を出す場合でもその先の印刷会社のことをしていると様々な交渉を有利にすすめることができるはずです。

制作会社のことは別の機会に譲るとして今回は印刷会社のがどんなことをしているか、最近流行りのネット印刷のビジネスモデルを含めて書いて見ようと思います。

ボクの経験に基づく業界の裏話ですが恐らく印刷会社の人間から直接聞くことはできない話だと思います。

これを読めば印刷会社が何を考えているか少しでも分かってもらえると思います。

 

印刷会社はどんなことをしている?

印刷といってしまえばそれでおしまいですが印刷にもいろいろと工程があります。
相手がやっていることを知るのが相手を知る一番の近道です。

印刷の工程について簡単にご紹介します。

・プリプレス
→印刷前の工程を指します。
印刷会社によっては組版等のデータ作りをしているところもあります。
出版関係の顧客が多い印刷会社には持っている部門です。
パンフレットのデザインもこの工程に入ると言えば入ります。

・製版
→印刷の原版をつくる工程だと理解してもらえればいいです。
プリプレス工程のデータを印刷できる原版のデータに加工します。
RIP(リップ)処理という工程でデータを点の集まりに変換します。
面付けといって大きな紙に冊子がページの順番どおりになるように並べることもここでやります。

・刷版
簡単に言えば印刷するためのハンコを作る工程です。
製版で作ったデータを感光剤を塗ったアルミのプレートに直接レーザーで書き込んで原版を作ります。
この原版は一度作るとそれほど持たないので一度印刷したら捨ててしまいます。
因みにこのアルミ板は後で売ることができるので刷版代の

・印刷
ここまできてやっと印刷です。
刷版を印刷機をセットして印刷していきます。

・製本
印刷した紙を切ったり、パンフレットして使えるように加工する工程です。

このような5つの工程で印刷は成り立っています。

印刷会社の見積もりもほぼこの工程にそって出されることが多く、これらの工程の項目に加えて、紙代や配送代が入ってきます。

印刷会社は基本的に設備産業です。
印刷機は一台数億します。
この莫大な設備投資を回収するのが彼らの行動原理です。
各工程の機械の投資額の回収分と維持費をベースに料金を設定してきます。

また印刷会社では(ネットの印刷会社以外は)料金表を作っていない会社が多く、各顧客ごとに見積もりを出していることが多いです。

なので印刷の見積もりを取る時は複数社同じ仕様で見積もりをとってみるといいでしょう。

 

実は印刷はすぐ終わる

印刷会社とのやりとりでよく納期交渉があると思います。
あれこれ理由をつけて時間がかかる旨を説明されるでしょう。

では実際印刷の時間はどのぐらいかかるものなのでしょうか
印刷機メーカーの小森コーポレーションをwebサイトを見てみると印刷機のスペックを見ることができます。

LITHRONE GX40P」という印刷機を見てみると18,000回転とあります。
この機械は両面印刷機なので一回で裏表の印刷が可能です。

更に菊全判とありますのでA4の16Pが1時間に18,000部印刷することができるという意味になります。

つまり10分で3,000部作れるのでほとんどのパンフレットは10分以下で印刷できてしまうことになります。

もちろん18,000回転というのは理論値に近く、絵柄だったり、より印刷の品質を求める場合はこれよりも回転を落として印刷する必要があります。

丁寧に印刷する印刷会社等も回転を落として印刷しています。

利益を求める印刷会社は最大に近い回転数までぶん回しているわけです。
因みにネット印刷もやっているB社はその当時の機械で15,000回転ぐらいで回していました。工場を見学した際にびっくりしたものでした・・・。
(案の定印刷の品質的な問題が出てきたのは言うまでもありません。)

もちろん刷版をセットしたり紙をセットしたり、色の調整をしたりと本格的に印刷機が動くまでに時間がかかりますが実際にはこれほど早く出来上がっているのです。

時間がかかる本当の理由はどちらかというと他の案件との順番待ちや印刷会社に都合によるものが多いです。

もちろんそれが悪いとは思っていません。念の為。

 

印刷会社の利益の出し方

印刷会社の利益の出し方ですが基本的には高く印刷の仕事をとるしかありません。
他には増刷(追加印刷)を受注するといった方法もありますが出版印刷を除き、近年増刷はその都度見積もりをとって安い印刷会社に出すといった動きも出てきています。

他にはコストを抑える印刷の仕方をとるという方法もあります。

細かいところを除くと付け合せで印刷するという方法です。
例えば4Pのパンフレットを4種類同時に印刷してしまうのです。

こうすると一枚の刷版で4種類同時に印刷できてしまうので、刷版だけでなく紙や人件費も節約することができます。

一方でクライアントには通常分の料金で請求します。

この方法のデメリットは印刷機の色合わせができなかったり、重たい絵柄があった時にその影響を受ける(うっすら違う絵柄が写ったりする)ということがあります。

もちろん影響が出ないように考慮しているはずですがまれに影響が出ることがあるみたいです。

なお、このやり方は後述するネット印刷では普通に行われていることであり、コストを下げるための一般的な方法です。

この様に書くと印刷会社は儲けている様に見えますが総じて印刷会社の利益率は悪く、また印刷会社市場規模の割に多いためパイの奪い合いして淘汰が進んでいるような状態です。

設備投資の回収を効率化し、価格を抑えるため24時間稼働にして単価をさげているケースもあります。

もちろんこれには一定以上の仕事量が安定してあるという前提があって初めてできるケースです。

 

ネット印刷のビジネスモデル

ネット印刷は非常に安価な価格で印刷を請け負ってくれます。
これは先程書いた付け合せ印刷(システムで自動化している)と24時間稼働の工場があって初めて成り立つ仕組みです。

ネットによって営業を介さず、24時間受注を取れるという仕組みで人件費を抑えています。

付け合せの印刷ということで、まず出荷までの日数を増やす=部数の近い案件を集めることができ、印刷会社の都合で印刷できる⇒安くなるという図式が理解できると思います。

なお、ネット印刷は基本的に通常のネット通販と同じ様にリピーター狙いでもあります。

安い価格で印刷を受注しながら顧客獲得コストをリピートで回収しています(初回会員登録で付与されるポイントがこれにあたります)。

 

大ロットは不要?なるべく小ロットで回したい

通常ロットが大きくなればなるほど単価が安くなり、効率が上がってくるはずですがネット印刷の場合、付け合せしづらい大ロットは敬遠される傾向にあります。

また全判を全て専有してしまうA4の16Pなどの冊子になると値段のメリットが下がってくる傾向があることを覚えておくといいでしょう。

 

ネット印刷の苦手の部分

効率化突き詰めることで低価格であっても利益が出るような構造になっています。
なのでできるだけ効率の落ちることや手間の掛かることはやりたくないのがネットの印刷会社の考えです。

小回りが必要なもの、例えば金箔押しや抜き型等の特殊加工や細かい配送分けなどには対応していません。

細かいニーズがある場合は営業のいる普通の印刷会社に依頼したほうがいいでしょう。

 

印刷品質の違い

印刷会社毎の品質の違いを気にされると思いますが結論から言うとネットの印刷会社を含めてそれほど大きく変わることはありません。

今は印刷機がとても良くなっており、インクの量についても印刷機で計測して自動で最適化できるものもあるくらいです。

自動で印刷の汚れや不良を検知するシステムすらあります。

 

結果として安いネットの印刷会社と通常の営業のいる印刷会社では印刷の品質だけでいえば大きな違いはなくなっており、通常の用途での印刷であれば問題になることはまず無いと思います。

営業のいる印刷会社を使うメリットとしては発注側の細かいニーズに合せて小回りが効くぐらいでしょう。

通常の印刷でよければネット印刷の品質水準で十分ですのでネット印刷を使いましょう。

 

もちろん食品を掲載する印刷物や高級マンション等、厳密な色合わせが必要なような案件はネット印刷ではできないのでコストが許せば通常の印刷会社に依頼した方が良いと思います。

ただし印刷会社にも得意不得意があります。

上記のような印刷物を依頼する場合は商業印刷が得意な印刷会社に依頼するといいでしょう。

(意外な話ですが印刷営業といっても印刷に明るくない営業というのは実際にいるのです。無形の商材では担当者の力量に依存するところが多いので人で選んだ方がいいと思います。)

 

 

最後に

ここまで印刷会社の構造について書いてきました。
最後に印刷営業についてももう少し書いておきます。

基本的に受注産業の印刷業界のため、営業も比較的にクライアントの言うことを聞く傾向があります。

印刷しかないので値引き交渉も下手な傾向があります。

印刷業界は社歴の長い会社が多い傾向にあるので売上高=仕事量を会社から求められていることが多いです。
つまり押せばなんとかなるという可能性が結構高いです。(※あくまで個人の感想です。)

もちろん近年では利益率を印刷営業のKPIにされることが増えてきているので利益の上がらない案件やあるかわからない「今後の取引」をエサに値引きを交渉をする方法は通じなくなってきていると思います。
(もちろんボクは現役時代にこんな方法はとっていませんでした。)

複数社に見積もりをとって平均価格を意識しながらいくのがいいかと思いますが今回の記事を読んでもらえば、印刷会社のことが分かり、見積書の項目の内容もわかってくると思います。

交渉が更にやりやすくなると思います。

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